Chart Books

yutakabu.com | Chartbook 2026W23

The Daily Shot
米国株式市場のファクター動向について。このチャートは、S&P500のハイベータ株と低ボラティリティ株の相対指数だ。ご覧の通り、足元ではベータが市場を席巻し、相対指数は急騰している。これをドットコムバブル期と比べると、まだバブル5合目ぐらいに見える。「当時ほどベータへの熱狂はない」と読む人も多いだろう。しかし、ここにはトリックがある。分母だ。この指数はベータ÷低ボラだから、分母の低ボラ株がどう動いたかで水準は大きく変わる。ドットコム期、低ボラ株は下落トレンドにあった。分母が縮めば、ベータの上昇以上に相対指数は跳ね上がる。当時の動きは、分子(ハイベータ)の熱狂に加え、分母(低ボラ)の崩落で水増しされた数字だったのだ。一方で、足元の低ボラ株は横ばいだ。ベータの過熱感を過小評価しないよう気をつけてください。
Goldman Sachs
韓国株について。このチャートは、韓国株の年初来累積資金フローだ。投資家を外国人・国内機関・個人・年金の4タイプに分けて資金フローを追っている。一目でわかるのは、外国人投資家が一貫して資金を引き上げていることだ。しかも5月の第2週あたりから売りが一段と加速し、累積で600億ドル超の流出に達している。ところがこの間、韓国株は絶好調だった。KOSPIは年初来で8割以上上昇し、サムスン電子とSKハイニックスがはメモリバブルを邁進している。外国人が抜けるなか相場を押し上げたのは、国内投資家、それも個人だ。グレーの個人投資家フローは右肩上がりで、外国人の売りを引き受けている。さて、韓国の国内個人投資家といえば、他に類を見ない投機家集団である。ビットコインが息巻いていた頃、彼らの熱狂ぶりは世界でも群を抜いていた。いわゆるキムチプレミアムだ。いま似たことが株式市場で起きている。
日本の政府債務問題について。このチャートは、縦軸に30年国債利回り、横軸に政府債務対GDP比率(2024年)をとり、G10諸国とユーロ圏各国をプロットしたものだ。全体として、債務比率が高い国ほど利回りも高いという右肩上がりの関係が見てとれる。その中で日本(JP)は債務比率が突出して高いのに、30年利回りは比較的低いことが分かる。この「債務の割に利回りが低い」理由として、日本の純債務比率は130%程度だから、という主張をよく聞く。政府が大量の金融資産を持っているので実質的な負担は軽い、という見方だ。私はこの見方に同意しない。というのも、日本政府が保有する金融資産を債務返済に充てるという意思を示さない限り、そのバッファーは机上の数字にすぎないからだ。使う気のない資産は、市場にとって担保にならない。それに、日本の30年利回りはまだ上昇の途中だ。さらに日銀が国債の半分を保有しているという構造上、日本の国債市場は自由市場としての価格規律を他国より失っている。だから政府債務と利払い費増加への懸念が、利回りに織り込まれるのが遅い。そのぶん、しわ寄せは別の場所に出る。為替だ。いまや為替介入も効き目を失いつつある。政策の裏付けのない介入は、もはや意味がない。手遅れになる前に、日本政府は債務削減の意思を世界市場に表明する必要がある。悪夢が始まる前に。
Challenger, Gray & Christmas
AIと人員削減について。このチャートは、コンサル会社チャレンジャーが集計する米企業の人員削減数のうち、「AIが理由」とされた分だけを抜き出したものだ。チャレンジャーの人員削減数とは、企業が発表した解雇計画を毎月集計したもので、実際に職を失った人数ではなく、あくまで企業が「これだけ減らす」と予告した数を指す。そのAI分が急激に膨らんでいる。足元のペースなら、今年は去年の4倍近くになりそうだ。削減理由に占めるAIの割合も1月の7%から5月は40%へ上がり、3か月連続で「最大の理由」となった。ここで考えたいのは、この削減が二つのどちらなのかだ。一つは、AIが人間の仕事をこなせるようになったから人を減らした、という「代替」。もう一つは、AIに投資する金をつくるために人を減らした、という「原資づくり」。同じ削減でも意味はまるで違う。私はおそらく後者が多数だと思う。つまり今の数字は、AIによる生産性上昇の証拠にはならないということだ。
The Daily Shot
欧州のインフレ状況について。このチャートは欧州の生産者物価指数(PPI)の推移で、黒線が前年比、灰色の棒が前月比を示す。前年比4.9%と予想を上回った。欧州はロシア産パイプラインガスを失ってから、エネルギー高にめっぽう弱い地域だ。イラン戦争による供給不安が、またしても逆風となっている。しかし、2021〜22年のサプライチェーンショックの水準には遠く及ばない。エネルギー高は痛いが、当時のような全面的な物価爆発とは規模が違う。逆風だが、まだ嵐ではない。