トランプ大統領を止められるのは金融市場だけだ

トランプ大統領は再び、関税戦争を激化させている。4月から特に内容の変わらない関税書簡を各国に送りつけているだけかと思えば、ブラジルには50%、カナダへは35%の関税を課して脅し始めた。カナダへの関税を受けて、米国金曜日のS&P500は0.3%下落した。

関税を大統領職における最も強力な手段として、前面に押し出そうというトランプ大統領の基本的な本能を止めるものは何もない。トランプ大統領は、株式市場さえも自分に味方していると思っている。

発言:「関税は非常に好意的に受け止められていると思う。株式市場は今日、新たな高値を記録した」とトランプ大統領は木曜日、NBCニュースに語った。

SNS:トランプ大統領はトゥルースソーシャルにて、株価の過去最高値を誇示した。「トランプ関税以来、エヌビディアの株価は47%上昇している」と主張した。

4月の相互関税発表時には、株式市場の暴落と債券市場の「悲鳴」が相まって、トランプ大統領は関税政策のペースを緩めざるを得なくなった。この市場からの反応がなければ、トランプ大統領は関税を武器にした強硬姿勢を控えることはなかっただろう。

市場が再び、4月並みのメッセージを大統領に伝えない限り、大統領は譲歩しないだろうという予感がする。トランプ大統領を止められるのは金融市場だけなのだろうか。(その前に各国が手際よく譲歩すればいいのだが)

しかし市場はメッセージを伝える気がない。株式市場は依然好調だ。

背景:トランプ関税は、当初懸念していたほど米国経済に悪影響を与えていない。雇用市場は景気後退への懸念を覆し、持ちこたえている。そして、インフレ率も急上昇していないどころか鈍化している。

一部の企業幹部は、業績が好転しつつあると述べ、決算シーズンが本格化する前に投資家を勇気づけている。例えば決算初戦を飾ったデルタ航空は、旅行需要が安定し、アナリスト予想を上回る第3四半期の業績見通しを発表した。わずか数ヶ月前には、関税の影響で年内業績の予測は困難だと述べていた。同社の株価は決算発表後12%急騰した。

一部のアナリストは、今年の株価上昇を牽引してきた大型株は増税による打撃を受けないかもしれないと指摘している。S&P500の中でウェイトの高い米国株の多くは、関税リスクからかなり隔離されている。

これらの材料が、足元の堅調な株価を支えている。しかし、市場を席巻したTACOトレードは”強欲”の極致に達しており、大統領がますます複雑化する関税戦略を緩和、あるいは撤回することを期待することに伴うリスクが高まっている。

債券市場からのシグナルは、わずかではあるものの、インフレのリスクを示唆している。短期金利は概ね安定しているものの、長期金利は「ベア・スティープニング」と呼ばれるパターンで急上昇しており、これはインフレ圧力の高まりの兆候と捉えられることが多い。

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