トランプ大統領、「少なくとも」3%の利下げをFRBに要求

米国水曜日、トランプ大統領はトゥルース・ソーシャルにて、「金利は少なくとも3%高すぎる。”遅すぎる男”は、米国に年間3600億ドルのコストを与えている」と主張した。

前回:6月19日には、トランプ大統領は「2.5%の利下げをすべきだ」と主張していた。あれ0.5%増えている。

想定:3%の利下げを行うとどうなるだろうか。足元のFF金利(政策金利)の誘導目標は4.25-4.50%なため、3%の利下げを行えば1.25-1.50%になる。これはFRBが想定している中立金利3%を、大幅に下回る水準になる。

中立金利とは、「景気を過度に刺激も抑制もしない中立的な政策金利水準」のことであり、中立金利を上回る政策金利は景気抑制的であり、下回る政策金利は景気刺激的だと考えられている。(重要:中立金利が何%なのかは誰も知らない)

FOMCで四半期に一度公表されるSEP(経済予測サマリー)には、FF金利のロンガーランが示されており、これが事実上のFRBが考える中立金利となっている。6月のSEPでは、3.0%の予想となっている。レンジは2.5-3.9%となっていることからも、メンバーによって中立金利の水準は異なっていることが分かる。

経済への影響:FF金利を、中立金利を大幅に下回る水準に設定すると米国経済はどうなるか。時代によって中立金利は異なるため、名目GDP成長率を中立金利と仮定すると面白い関係が見えてくる。

青線はFF金利からGDP成長率を引いたもの、赤線はGDP成長率になっている。FF金利が中立金利(GDP成長率)を大きく下回る期間、つまり青線が0を大きく下回っている期間は、経済が堅調に拡大していることが分かる。

また、灰色でハイライトされているのはリセッションに陥った期間であるが、いずれもリセッションになる前に、FF金利の水準が中立金利(GDP成長率)を上回ろうとしていることが分かる。これが、予防的利下げでなければ、景気を支えることにはならない所以である。

こう見ると、足元はよくリセッションを避けているなと思うが、AI周りでの技術革新がなければ、ChatGPTが現れなければ、とっくにリセッションに陥っていたかもしれない。

株価への影響:経済はインフレも相まって、名目ベースですさまじい成長を遂げる可能性が高いため、企業収益に基づく株式市場は活況を呈することになる。FF金利の誘導目標を0.00-0.25%に据え置いた2009年から2015年や、コロナ下での活況ぶりを見れば一目瞭然である。

株価上昇は嬉しいことではあるが、穿った見方をすれば、3%の利下げはバブルとインフレを生み出し、後のリセッションの度合いを高めるだけかもしれない。

3%の利下げは叶うのか:中立金利を大幅に下回る利下げをするには、インフレ率が2%程度になり、失業率が急上昇する状況になる必要がある。今の状況的には叶いそうにない。

しかし、FOMCメンバーをトランプ陣営に揃えれば叶うかもしれない。FOMCは理事7名と地区連銀総裁5名で構成されている。大統領が任命できるのは理事のみ。

現時点で、ウォラー理事とボウマン理事は、トランプ1期目に任命された理事でありトランプ陣営である。クーグラー理事が来年頭に任期を終えるため、新しい理事はもちろんトランプ陣営である。これで3名。

パウエルFRB議長は、来年に議長の任期が終わるが、その後理事として2028年頭まで参加する。理事として続行するのを辞退すれば、4名になる。

それでも残り8名のうち、何名かを超ハト派に説得する必要がある。実現可能性は今のところ低そうだ。が、トランプ陣営が増えるほど、市場の期待値は高まるだろう。

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