
ブルームバーグによれば、米ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは、ここ2カ月で2度目となる米国株の見通し引き上げを行った。向こう12カ月のS&P500の目標株価を6900と、従来の6500から引き上げ、年末時点の目標値も6100から6600に上方修正した。

なぜか:①FRBがより早期に利下げすること、②米主要企業の堅調な業績が株価押し上げの要因になると分析している。順番に深堀りしていく。
米国株投資家にとって、FRBによる利下げの有無は、株式市場に対するスタンスを大きく左右する重要な要因である。一般に、利下げが実施されると企業の借入コストが低下し、資金調達が容易になることで経済活動が活発化しやすくなる。下記のチャートが示すように、利下げが行われると、遅れてGDPは拡大する。

その結果、企業業績の改善が期待され、株価の上昇要因となる。加えて、債券利回りの低下により株式の相対的な魅力が増すため、投資家はリスク資産への投資を積極化する傾向が強まる。
確かめる:利下げをすると本当に株は上がるのかを確認する。下記のチャートは、6か月以上金利を据え置いた後に、初めて利下げをしてからの株価パフォーマンスを集計したものである。ゴールドマンサックスが出している。水色の線が示すように、リセッションに陥らなければ、利下げ後のS&P500は1年で中央値15%程度上昇している。

FRBによる利下げが再開されれば、株価が上昇する可能性が高いことは分かった。では、ゴールドマンサックスはなぜ、利下げが早期に再開されると考えているのだろうか。
理由:ブルームバーグによれば、同ストラテジストらは「米国の貿易戦争が企業の業績見通しに不確実性をもたらしているものの、企業はコスト削減や価格戦略の見直しを通じて、関税の影響を徐々に吸収していく」とみている。つまり、関税コストは企業がうまく吸収することで、FRBが危惧している消費者物価への影響は和らぐとみているということである。
関税によるインフレ影響が軽微であるならば、FRBは早期に利下げに動きやすくなる。パウエルFRB議長は、「もし関税政策がなければ利下げしていただろう」と主張していた。

FRBは足元の『4.25~4.50%』という景気抑制的な政策金利水準から、3%程度の中立金利に向けて利下げを再開することになるだろう。

続いて、株価上昇を期待する理由2つ目、『米主要企業の堅調な業績』について深掘りする。ブルームバーグによれば、同ストラテジストらは、「1-3月(第1四半期)の好調な決算が結果的にわれわれの自信を深めた」とリポートに記している。
振り返り:第1四半期のEPSは、決算発表前は前年比6%程度の増益予想だったが、結局11%強の増益率となった。大手ハイテク企業は、ディープシークの出現にもかかわらず、データセンター投資に関してポジティブな見通しを発表した。

第2四半期のEPS市場予想は、トランプ関税以降、大きく下方修正されており、9%の増益予想は4%弱にまで下方修正されている。この低すぎるハードルを飛び越えれなかった場合は、株価は大きく売り込まれるリスクがある。
第3、第4四半期も同様である。ゴールドマンサックスは、これらの低いハードルを容易に飛び越え、米企業は関税にもひるまない底堅さを見せると考えているのだろう。
以上が、ゴールドマンサックスの目標株価引き上げの深掘りである。多くの人が感じているだろうが、株価の後追いである。バンクオブアメリカも上方修正している。トランプ大統領の関税政策に振り回されて可哀想にという見方もできるが、こうなると短期的な出口戦略を考えたくなるのが逆張り勢の性である。
