
大いに宣伝された90日間の関税交渉期間が明日終了を迎える中で、トランプ大統領は、主要貿易相手国に対する新たな関税を発表する多数の書簡を発行した。これらの書簡に記された関税率は、4月2日の解放記念日に発表された数値とほぼ変わらないものとなっている。
主要貿易相手国であり伝統的な地政学的同盟国でもある日本と韓国には25%関税が記された書簡を早々に送りつけており、このことは米国内では、経済的に重大な事として取り沙汰されているようだ。

ただの延期:しかし、交渉期間の終わりに先立って送られた関税書簡が有効になるのは、3週間後の8月1日からのようだ。関税率も当初から変わらないとなると、この書簡は、ただの交渉期間の延期を伝えるものでしかない。

昨日の解説記事では、「これは今までと何も変わらない脅しである。(最後の脅しかも)」と言及したが、トランプ大統領は今日、最後の脅しだと実際に警告してくれた。
最終警告:トランプ大統領はトゥルースソーシャルにて、今回の関税引き上げは本物であると主張し、単なる交渉のフェイントではないことを示唆した。「関税は2025年8月1日から支払われる。現時点で変更はなく、今後も変更はない」「延長は認められないだろう」と述べている。

しかし、市場はまったく信じていないようである。米国株は微動だにしていない。S&P500はわずかに下落、ナスダックはわずかに上昇、小型株に至っては0.7%しっかり上昇している。

市場は、これらの高関税書簡の脅威を概ね無視し、トランプ大統領が今後さらなる合意形成を結ぶこと、そしてそのための関税の更なる先送りをするだろうと考えている。国によって交渉の期限が異なってきたのがその表れである。
それでも、市場の一部はトランプ関税に過敏に反応しているようだ。
セクター関税:トランプ大統領は、銅に対する関税を発表した。「今日は銅を扱っている」とトランプ大統領は会談中に述べ、ラトニック商務長官に目を向け、税率は50%になることを確認した。これは鉄鋼アルミと同率の関税になる。これを受け、銅価格は9%上昇し最高値を更新している。

サザン・コッパ―等の銅関連の銘柄は、アウトパフォーム幅が足りない気がする。

合わせて、医薬品セクター関税にも言及。医薬品メーカーに対して、関税導入までに米国内に生産拠点を移転するための猶予期間として、「およそ1年から1年半の猶予を与える」とし、「それ以降は、医薬品を国外から米国に持ち込む場合、200%といった極めて高水準の関税を課す。一定の期間を与えるが、その間に体制を整える必要がある」と述べた。

残すセクター関税は、半導体と木材といったところだろうか。残念ながら、発表タイミングはまったく読めない。
株式市場が関税を気にかけないのであれば、焦点は企業業績・決算である。木曜日に発表されるデルタ(DAL)の決算がキックオフである。
下記のチャートが示すように、足元の予想PERが22倍を超え、更なる上昇余地が限られている中、株価が更に最高値更新するには、予想EPSの上昇が不可欠である。予想EPSの上昇には、企業が決算で市場予想をビートし、明るいガイダンスを示す必要がある。

第1四半期の決算は、見事に市場予想をビートし、大手ハイテク企業が投資に関する前向きなガイダンスを示してくれたことで、株価の急反発につながった。第2四半期はどうなるだろうか。今月最大のイベントである。