トランプ大統領の『税制法案』遂に可決 ― 投資家にとって重要なこと

米連邦議会下院は3日、共和党がまとめた税制法案『ひとつの大きくて美しい法案』を僅差で可決した。下院は賛成218票・反対214票で可決、法案は4日の独立記念日にトランプ氏の署名で成立する。法案には減税、国境警備強化、社会保障支出削減などが盛り込まれており、上院の修正案には多くの共和党下院議員が懸念を示していたが、結局下院は修正案を受け入れ、トランプ大統領が議会に対して設けた7月4日の期限に間に合う形で可決された。

重要なこと:投資家がこの税制法案において認識しておくべきことは3つある。①特定のセクター企業に対する影響 ②金利への影響 ③トランプ大統領の影響力 である。順番に解説していく。

『ひとつの大きくて美しい法案』には、特定の業界に影響を与える法案がいくつか含まれている。影響ある業界をいくつかピックアップする。

防衛:造船やミサイル防衛システム(ゴールデンドーム)、防衛サプライチェーンの再構築などを対象に、1500億ドルの国防費が追加歳出される。防衛関連企業、造船関連企業には数年単位の受注が見込まれる。また、NATOの防衛費増額も追い風となる。

エネルギー:トランプ大統領は再生可能エネルギーに対する支援を段階的に廃止し、化石燃料への支援を行い生産を増やすことを目指している。具体的な化石燃料に対する支援策としては、連邦政府の所有地へのアクセス拡大と、政府に払うロイヤリティの大幅な引き下げが行われる。

資本財:重機や工場ライン、倉庫改修など生産設備のアップグレード費用に対する特別償却や、研究開発費の減税が適用される。

金利への影響は複雑だが、単純に考えれば長期的に金利上昇圧力になるだろう。議会予算局(CBO)は、この法案によって今後10年間で債務が3兆3000億ドル増えると予測している。また、債務上限は5兆ドルに拡大している。長期的に見れば、3兆3000億ドル規模の減税政策の実行は、国債増発を招くため金利には上昇圧力になるだろう。あとはFRB次第である。

債券市場にとっては厄介かもしれないが、株式市場にとっては債券市場がクラッシュしない限り、歳出拡大は嬉しいことである。トランプ大統領の税制法案は、米国企業に多額のフリーキャッシュフローをもたらすことになる。

最後に、トランプ大統領の影響力について考えたい。振り返れば、わずか2週間で前例のないイランへの米国による攻撃を承認し、ほぼ即座に停戦を仲介した。NATO加盟国は10年来の国防費増額要求に屈した。さらに、報復税という下書きの法案を用いて、G7のグローバルミニマム課税を取り下げさせた。そして今回、反発必至と思われた上院修正案を強行採決させた。

ワシントン政策ストラテジストは「私は連邦議会と公共政策の両方の役職に就いたことがあるが、ドナルド・トランプ氏ほど常に影響力を持つ大統領は見たことがない」と語っている。

CNNの調査によれば、トランプ大統領は近年のどの大統領よりも、共和党支持者の間で人気が高いことが分かった。「共和党員は、アメリカ人がディズニーワールドを愛するのと同じようにドナルド・トランプを愛している

投資家は、少なくともあと3年間、彼の動向を注視しなければならない。トランプ大統領の影響力は、あらゆる資産に波及する。

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