米上院共和党、税制法案を何とか前進させた

彼らには週末はおろか、寝る時間すら与えられない。米国28日深夜、上院本会議は、トランプ大統領が推進する税制法案『ひとつの大きくて美しい法案』の審議を開始する動議を、51対49で何とか可決し前進させた。

審議入り動議とは:この税制法案を本会議で正式に審議するかを問う一番最初の表決である。この動議が可決されると、上院は法案の詳細な審議や修正案の提出、討論などを行うことが出来るようになる。

動議可決までにはいくつかドラマがあった。最終的には、共和党員2名、ケンタッキー州選出のポール上院議員と、ノースカロライナ州選出のティリス上院議員が反対票を投じ、51対49とぎりぎりでの動議可決となった。

なぜ2名は反対票を投じたのか:ポール氏は債務上限を5兆ドルに引き上げる条項に反対し、ティリス氏はメディケイド削減案に反対した。トランプ大統領はトゥルース・ソーシャルにて、「新しい候補者をたてる」とティリス氏を痛烈に批判した。

それ以外の共和党議員も抵抗を見せた。ジョンソン氏、リー氏、スコット氏、ルミス氏の4名は、投票を3時間以上も延長させ、バンス副大統領を含む党幹部らと交渉を続けた。ジョンソン氏においては、当初反対票を投じていたが、メディケイド削減に関する修正案採決の約束を勝ち取ったことで、賛成票へと変更した。

次のステップは:審議開始の動議が可決された後の次のステップは、上院本会議での法案の詳細な討論と修正案の審議になる。その後、討論が終結すると最終評決が行われる。上院で可決された場合は、下院で再び審議され、そのまま最終案としてトランプ大統領の手に渡るか、下院で拒否されれば両院協議会を経ることになる。

最終法案が上院で可決される前に、何時間にも及ぶ議論と、それに続く『vote-a-rama』と呼ばれる無制限の修正案投票が行われる。今後の展開としては、vote-a-ramaにおいて、どのような修正案が採決されるのかが重要なことである。

注目すべき条項は:『メディケイド削減』と『SALT控除』がどのような着地になるかが最も重要なポイントである。これまでの動画で説明してきたように、この二つの条項は、共和党内でも意見が割れており、バランスのとれた妥協案が採決されなければ、上院または下院で、税制法案全体が否決される危険性がある。

法案否決となれば、目標の7月4日までにトランプ大統領のもとに法案を持っていくことはできなくなるどころか、債務上限引き上げ実現に対する懸念が高まり、楽観姿勢の強まっている投資家にとっては避けたい事態となる。

29日にも上院で最終可決させ、下院に送りたいと共和党指導部は考えているが、民主党による法案全文の読み上げ要求という遅延行為等によって30日までずれ込むだろう。投資家としては、どのような修正が行われるかに注目したい。

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