トランプ大統領「FRB議長後任は利下げを望む人物を指名する」

米国27日、トランプ大統領は記者団に対し、パウエルFRB議長の後任について「金利を今の水準に維持しようとか、そういう考えの人間は選ばない。利下げを望む人物を指名する。そういう人間はたくさんいる」と述べた。

FRB議長は誰が選ぶのか:FRB議長は、米国大統領が指名し、上院の承認を経て任命される。議長の任期は4年で再任も可能である。後任は通常、上院承認などの手続きに時間がかかるため、任期満了の数か月前、前年の秋(9月~11月ごろ)に大統領が指名し発表することが多い。パウエルFRB議長の任期は2026年5月15日までである。(理事としての任期は2028年まで

トランプ大統領は以前から、金融当局に対し利下げ圧力をかけており、パウエルFRB議長を「遅すぎる男」「頑固で愚かな人間」と繰り返し批判してきた。トランプ大統領が選ぶ後任は、疑うことなく超ハト派の議長となるだろう。

では、議長が超ハト派であれば、FRBは積極利下げへと移行するのだろうか。そうは問屋は卸さない。FOMCは12名(理事7名+地区連銀総裁5名)で構成されており、多数決で政策を決定する。議長ひとりの一存で決めれるわけではない。

FRB議長はFOMCでの議論や合意形成を主導する立場にあり、そのリーダーシップや発言は、ほかの理事や地区連銀総裁のスタンスに少なからず影響は与える。しかし、FRB議長の考えがFOMC内で少数派になることは稀ではない。特に、政策転換期や経済情勢が不透明な時期には、議長の方針に対して明確な異論が出ることも珍しくない。

重要な事は:FOMCメンバーの構成を把握することが重要である。地区連銀総裁5名はホワイトハウスの意向を反映させることはできないため、重要なのは大統領が指名する理事7名の構成である。

理事7名は、パウエル氏、ジェファーソン氏、ボウマン氏、バー氏、クック氏、クーグラー氏、ウォラー氏となっている。このうち、パウエル氏はオバマ政権時から理事をしており、ボウマン氏とウォラー氏はトランプ第一次政権時に指名された理事である。他の5名はバイデン政権時に指名されている。

ボウマン理事とウォラー理事は、すでに7月利下げを支持するなどトランプ政権寄りのスタンスを取っている。他のメンバーのうちクーグラー理事は、来年1月に任期を迎える。理事の後任も大統領が指名するため、これでハト派(トランプ派閥)は3人になる。次期議長がウォラー理事になるのか新しい理事になるのかは分からないが、積極利下げに3票決まっている状況になる。

最後に、ボウマン理事、ウォラー理事、パウエル議長、任期終了が近いクーグラー理事以外の理事のスタンスを確認する。

ジェファーソン理事(副議長)は、最近のインフレ指標は米金融当局の2%目標に向かって一段と進展していることを示すが、「まだ目標に到達してはいない」とし、積極利下げのスタンスは取っていない。

バー理事は、インフレを目標値に戻すことは非常に重要であり、金融政策は状況の展開を見守る態勢が整っているとし、こちらもまた積極利下げのスタンスは取っていない。

クック理事は、いつ利下げを再開できるかについては明言していないが、関税が経済に浸透すれば最近の低いインフレ率は反転する可能性が高いとし、こちらもまた様子見スタンスを取っている。

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