【米国株 最高値更新】チキンなのはトランプ大統領ではなく、諸外国か

6月28日、米国27日の株式市場は、カナダとの新たな緊張が生じたにもかかわらず、貿易交渉と税制法案に対する楽観的な見通しを背景に、S&P500、ナスダックともに最高値更新となった。

イスラエルとイランの紛争が一時解決してから、市場の関心は貿易交渉税制法案に戻った。貿易交渉においては多くのニュースフローがあった1日だった。

トランプ大統領は木曜日遅く、中国との間で(貿易戦争休戦の)合意に署名したと発表。中国商務省はレアアースの輸出許可を承認していくと改めて強調した。また、トランプ大統領は、インドとも、米国企業に対してインド市場を開放する「非常に大きな」貿易合意が近く締結される可能性があると述べた。

ラトニック商務長官とベッセント財務長官はともに、多数の国との貿易協定が控えていると発言した。ラトニック商務長官は、相互関税停止期限の7月9日に向けて、今後2週間以内に複数の貿易協定を取りまとめると発言。「まず最重要の10件の協定をまとめ、それを適切なカテゴリーに分類する。その他の国々はそれに続く形になると述べた。

ベッセント財務長官は、主要貿易相手国との協議がレイバーデイ9月1日までにまとまる可能性があるとの見解を示し、7月9日までの一時停止措置を延長する可能性があることを示唆した。

いずれも前向きなコメントであり、株価は堅調に推移した。しかし、引けを前にネガティブな交渉ニュースが浮上。トランプ大統領が、カナダがデジタルサービス税導入に向けて動いていることへの報復として、カナダとの貿易協議を全て打ち切ると表明した。トランプ大統領によれば「7日以内にカナダが米国と取引する際に支払うことになる関税をカナダに知らせる」ことになる。これを受けて株価は縮小、S&P500は一時前日比マイナスまで下落した。

しかしその後、引けまでの1時間で0.52%まで反発、終値ベースでの最高値更新を達成した。なぜ反発したのか。もはやTACOトレードではなく、米国優位な交渉期待トレードのようなものである。カナダも結局、米国との貿易交渉を継続するために、デジタルサービス税の導入を諦めるだろうと、市場は楽観視している。チキンなのはトランプ大統領ではなく、諸外国なのかもしれない。(中国除く

中国との合意においては、対中関税は30%追加される。内訳は、トランプ大統領が絶対に譲ろうとしない基本関税10%とフェンタニル取引に関する20%の合計である。フェンタニル取引に関する20%は、相互関税とは関係なく、中国の対応次第では取り消される税率である。つまり、米国側は、中国に対し大幅な貿易赤字を抱えているにもかかわらず、10%の基本関税の追加とレアアースの獲得で妥協している。貿易黒字の英国と大差ないのは明白である。

米国は方針転換したのか。大幅な貿易赤字を抱えている中国には、レアアースという重要な人質を取られているため、強硬姿勢を取り下げ、貿易赤字の解消は諦める。その代わりに、中国以外の国との赤字を埋め、下手したら黒字にまで持ち込もうとしているのかもしれない。EUや日本にはレアアースのような切り札はあるのだろうか。ラトニック商務長官の言う「最重要な貿易協定10件」の動向に注目したい。

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