トランプ大統領「2.5ポイント利下げをすべきだ」

トランプ大統領は先日、トゥルース・ソーシャルにおいて、パウエルFRB議長は2.5ポイントの利下げを実施するべきだとの考えを示した。

パウエル議長率いるFRBは、先日のFOMCにおいて、FF金利(政策金利)の誘導目標を4.25-4.5%に据え置いた。トランプ大統領はこの決定に対して、「遅すぎるジェローム・パウエルは、我が国に多額の損害を与えている。2.5ポイント利下げすべきだ」とトゥルース・ソーシャルに投稿している。

2.5ポイント利下げすると米国経済はどうなるだろうか。FF金利の誘導目標は、1.75-2.0%になる。重要なのは、これはFRBが想定している中立金利を大幅に下回る水準であるということである。

中立金利とは、「景気を過度に刺激も抑制もしない中立的な政策金利水準」のことであり、自然利子率(実質ベースの中立金利)に予想インフレ率(物価目標)を加えたものである。FOMCで四半期に一度公表されるSEP(経済予測サマリー)には、FF金利のロンガーランが示されており、これが事実上のFRBが考える中立金利となっている。

6月のFOMCではFF金利のロンガーランは3.0%と予測されており、トランプ大統領の言う通り2.5ポイント利下げすると、政策金利は中立金利を1%下回ることになる。

中立金利を下回るとどうなるか:中立金利を下回る政策金利は実質利子率を押し下げ、投資・耐久財消費を刺激して総需要を押し上げる。潜在成長率超過のGDPギャップにより労働需給は逼迫し、賃金・物価上昇圧力が強まり、期待インフレ率が上昇する。つまり、経済は堅調な成長を遂げるが、インフレ期待が高まり、意に反して実金利が上昇してしまう可能性がある。

★とはいいつつも、経済はインフレも相まって、名目ベースですさまじい成長を遂げる可能性が高いため、企業収益に基づく株式市場は活況を呈することになる。実際、GDP成長率を下回るFF金利の引き下げを行っていた期間は、GDP成長率が右肩上がりとなっている。

話を戻すと、中立金利を下回る利下げは、反動ダメージも大きい諸刃の剣である。すでに物価目標を下回るインフレ率で経済が停滞している状況であれば、中立金利を下回る利下げを行っても、過度な経済成長やインフレを引き起こす可能性は低くなるが、今がそのような状況でないのは誰の目で見ても明らかである。

FRBは2.5ポイントの利下げはしないのか:FRB議長がパウエル氏であるならば、インフレ率が2%に落ち着き、失業率が上昇する状況にならない限り、中立金利を下回る利下げは行わないだろう。FRB議長がパウエル氏であるならば。

パウエル議長の任期は2026年5月に終了する。次の議長次第では、FRBの方針が変わる可能性はある。(もっとも、新しい議長がメンバーの票を動かすことができればの話だが)

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