
ホワイトハウスのレビット報道官は「トランプ大統領は、イランを攻撃するか2週間以内に決定を下す」と、記者会見で述べた。トランプ大統領はここ数日、イランの核開発計画を阻止するためのイスラエルの対イラン戦争に参加するかどうかについて、要人たちの議論を繰り広げてきた。

なぜ投資家にとって重要なのか:2週間以内の決断の内容によって、相場の方向感が決まるからである。参戦するとの決断(バンカーバスターの使用など)になれば、イランからの報復などを警戒し地政学リスクは跳ね上がる。結果、原油価格は急騰、株式市場は急落、債券市場は一時買われるかもしれないが原油価格高騰を背景に売られ、金はおそらく上昇することになるだろう。イランとの核合意へ進展となればその逆になる。
金融市場にとってうれしいのはもちろん核合意への進展、机の上だけでのやり取りなわけだが、そのためには「イランが、ウランを濃縮したり核兵器を製造したりできないことを保証しなければならない」とレビット報道官は明言している。一方で、イランは降伏するつもりはないとの姿勢を貫いている。

最悪のシナリオ:投資家が最悪のシナリオとして警戒しているのは、米国が参戦するとの決断を下し、その報復としてイランがホルムズ海峡封鎖に向けて動き出すことである。世界の海上輸送原油の約3割がこの海峡を通る。原油輸送の「大動脈」であるホルムズ海峡が封鎖となれば、原油価格は120ドルまで急騰すると見ているアナリストもいる。

チャートが示すように、原油価格の上昇はインフレ期待の上昇を招く。インフレ期待の上昇は、株式、債券の下落圧力となる。

RBCキャピタル・マーケッツは、原油相場の高騰を背景にインフレが急上昇すれば、S&P500は現行水準から20%下落する可能性があると指摘している。(動画で解説しているのでぜひご覧ください)

イギリス石油大手のシェルのCEOも、ホルムズ海峡が封鎖された場合、世界の貿易に大きな衝撃が走る恐れがあると警告している。

直近では何に注目か:トランプ大統領の決断に先立ち、欧州各国の外相は、金曜日にジュネーブで、イラン当局者の会談し、緊張緩和とイランの核活動の縮小を迫る予定である。この会合でイランの核合意に向けて進展するとの期待は正直薄いが、何らかの判断材料が提示されるはずである。
