金がユーロを抜き、世界第二位の準備資産に

欧州中央銀行(ECB)が公表した通貨の国際的地位に関する年次評価レポートによると、世界各国・地域の中央銀行の外貨準備資産に占める金の比率が、初めてユーロを抜いて第2位に浮上した。

ピクテジャパン)外貨準備は為替介入に使用される資金であるほか、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合等に使用されるなど、一般的に外貨準備の保有は国や通貨に対する信頼性や、金融システムの安定化などに重要な役割を果たすと考えられている。

中央銀行はどれほどの金を保有しているのか。ECBによれば、2024年末の中央銀行の金準備保有量(左図の青線)は、ブレトンウッズ体制終了時に匹敵している。インフレ調整後の実質金価格(左図の黄線)の上昇も相まって、金は2024年に米ドルに次いで世界第二位の準備資産となった。

また、セクター別の金需要の割合(右図)をみると、中央銀行は世界需要の20%以上を占めており、2010年代の平均10%からシェアが倍増している。これは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、外貨準備向けの金需要が急増し、その後も高水準を維持していることを表している。

なぜ中央銀行は金を保有するのか。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が世界の主要な中央銀行を対象として実施した調査では、中央銀行が外貨準備として金を保有する主な理由として、①長期的な価値の保存・インフレヘッジ ②危機的状況下でのパフォーマンス ③効果的なポートフォリオ分散 ④デフォルトリスクがない ことを挙げている。

また、新興国の中央銀行の中には、金を保有する理由として、制裁措置や主要通貨の役割低下の可能性に関する懸念を挙げたところもある。例えば、ECBによれば、中国、トルコ、インドは主要な購入者リストのトップを占めている。下記チャートは、中国の中央銀行の外貨準備に占める金の割合を示したものだが、2023年から急速に拡大していることが分かる。

中央銀行は今後も金の保有を拡大するのか。中央銀行という図体のでかさを考えると、トレンドが急に変わることは起こりにくく、足元のトランプ政権によるドルの不信感も金保有を拡大させる動機となっている。また、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の調査によれば、外貨準備に占める金の割合が5年後には現在よりも増加していると予想する中央銀行の割合は、全体の7割程度と増加傾向にある。

金が持つ「インフレに強い」、「信用リスクが無い」、「分散投資効果がある」という特徴は、中央銀行だけでなく、個人投資家にも刺さる。この需給的要因が、前回説明した金の先物価格とインフレ連動債モデルベースの価値評価の乖離を説明している。

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